"出世街道"演歌旅14

昭和48年6月3日、愛知県刈谷市民会館での畠山みどりショーで考えもしなかった事件が起きました。
出演してもらったタレントの八代英太さんが舞台から奈落に転落して、脊髄を損傷する重症を負ったのです。
八代さんの出演時間は15分間で、待ち時間が終わるとせりで下がるはずでした。
ところが、市民会館の職員が、出番からわずか30秒でせりを下げてしまったのです。
打ち合わせも不十分でした。
私も病院へ直行しました。
奥様とお嬢様には、「申し訳ありません」と泣いてお詫びしました。
お二人は「あなたが悪いのではない」と言ってくれたのですが・・・。

刑事事件としては不起訴処分でしたが、民事では歌手としてではなく、司会者らを使っている雇用主として、刈谷市や興行主とともに、八代さん側から損害賠償の訴えを起されました。
裁判は10年以上に及びましたが、1億円で和解が成立しました。
刈谷市が7千万円、私が2500万円、興行主が500万円支払いました。
八代さんが、車椅子の国会議員として郵政大臣まで務められ、ご活躍されるのはご存知の通りです。

私は体質もあるのか、出産したころから、気を抜くとすぐに太ります。
美容と健康のため31歳のとき、19キロも減量して話題になりました。
58年にはテレビ番組で減量を宣言して成功させた上で、「ポカポカあったためてグングンやせる」(海竜社)を出版しました。

この本は50万部を売るベストセラーになり、大反響を呼びました。
全国どこの本屋さんをのぞいても、平積みされていましたね。どういうわけか、沖縄県ですごく売れたんです。
1冊780円で、印税が12%でした。これが本ではなくレコードだったら、NHKの紅白歌合戦に復帰ものでしたよ。

「やせる講演会」で全国各地を回りました。
ヒット曲を5,6曲歌って、やせる実践をお話しました。
ある特定のサプリメントを飲むのですが、肝心要の考案者が薬事法違反の疑いで捕まってしまって・・・。
若い頃から健康には自信があったのですが、断食など減量の無理がたたったのか、61年4月、47歳の時に肺炎で倒れ入院しました。
草津温泉(群馬県)のホテルで2ヶ月間の仕事の途中でした。
どうにか歌えるのですが、間奏になるとせき込んでどうにもならなくなり、救急車で病院へ運ばれました。

2週間も入院してホテルにはすっかりご迷惑をお掛けしたので、元気になってからノーギャラで出演して、お礼させてもらいました。
副業として、昭和40年代から東京の六本木に「どさんこ」を、バブル期には母の名義で中野新橋(中野区)に4階のビルを建てて「とんとんばやし畠山」
を経営しました。いずれも小料理のお店です。
中野新橋の回転は、新宿に新都庁がちょうど完成したころで、景気もよかったですもの。
ひと晩でお客が3,4回転して1日の売り上げが200万以上もありました。
株取引に手を染めて巨額な負債を背負い込むのはバブル経済がはじけてからです。


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